2013年2月3日日曜日

いじめは増えていない。でも、減ってもいない。

大津の事件を機に、大きな話題になったいじめ問題。でも、その実態は体系的に把握されていませんし、具体的な対策も進んでいません。
 「ストップいじめナビ!」は、このような状況に対し、荻上チキさんや清水康之さんを中心に、「いじめ」に苦しむ子どもたちや保護者、学校関係者などに向け、「いじめ問題」を具体的に解決するための方法を提示・実現させていくための試みです。

ウェブサイトは、「ストップいじめ!ナビ(いますぐ役立つ脱出策)」として、いじめや嫌がらせから抜け出す方法をまとめた情報ページ、「ストップいじめ!ナビ (いじめを止めたいおとなたちへ)」として、いじめに関する保護者や学校向けの情報をまとめたページのふたつから構成されています。

このサイトに、新しく「統計データ」が追加されていました。
いじめのデータは基準もバラバラで、何よりもその認知が難しいため、客観的なデータになりえないという問題がありますが、 「ストップいじめナビ!」の「統計データ」は、複数のデータが並列して紹介されているので、状況をできるだけ冷静に把握するきっかけにしやすいのではないかと思います。


いじめは増えても減ってもいない。

「ストップいじめナビ!」では、データをもとに、いじめは増えても減ってもいないと分析しています。

昨年、大津市のいじめ事件をきっかけとしていじめ報道が過熱する中、文部科学省が行った緊急調査では、その途中経過(4~9 月)の結果でさえ、2011年の総認知件数をはるかに上回ったと報告され、話題になりました。「ストップいじめナビ!」では、まず最初に、「本当にいじめは増えているのか」という視点から、データを分析しています。

まず、こちらは文部科学省が行っている統計を並べたものです。
文部科学省のデータは、学校側の認知件数を国が取りまとめたものです

「平成22年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」に基づく「ストップいじめ!ナビ」によるまとめ
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/08/__icsFiles/afieldfile/2011/08/04/1309304_01.pd
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そして、こちらは、国立教育政策研究所による、小学校のいじめ被害経験率の調査。
一人ひとりの生徒に、「どんな嫌な目にあったのか」を尋ねるというアンケート調査です。


国立教育政策研究所生徒指導研究センター『いじめ追跡調査2004-2006』『いじめ追跡調査2007-2009』より
http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/shienshiryou2/3.pdf


文科省のデータでは、発生件数に増減の波がありますが、国立教育政策研究所のデータでは目立った変化はありません。この違いは、どこから派生しているのでしょうか?主な理由はふったうあります。
ひとつ目は、文科省のいじめの定義の変更です。
文科省のデータは、学校側の認知件数を国が取りまとめたものですが、いじめが問題化されるたびに、985年定義、1994年定義、2006年定義のそれぞれで、より多くの数をカウントできるような仕方に変えたため、当たり前ながら、認知件数が跳ね上がる結果になりうるというわけです。

ふたつ目は、「学 校側の認知件数」によるという点です。
文科省の数字は、あくまでも「学校側が把握できた」いじめ件数の推移であるということです。いじめの報道が盛り上がると、学校側にプレッシャーがかかり、普段以上にしっかりいじめを把握しようとする。その結果、 アンケートや個人面談を一生懸命行うので、社会問題化された時期の認知件数は増えるわけです。しかし時間が経つと、、熱が冷めてしまい、「学校側の認知件数」は減るということになります。 
 「ストップいじめ!ナビ」では、以上のような背景から、「文科省のデータ上では、いじめの数に増減があるように見えてしまう。でも、この文部科学省のデータは、実際のいじめ件数の増加と はリンクしていません。」として、教育政策研究所が行っている統計の方が、現実に即しているとして、「いじめは、増えても減ってもいない」とみるのが正しいのではないかと解説しています。
報道でも、データの根拠までくわしく紹介せず数字だけが独り歩きするケースが少なくありません。正しい把握が重要だと思います。
 「ストップいじめ!ナビ」他にも、いろいろなデータが掲載されています。



 いじめ防止、解決のツールも用意。

「ストップいじめ!ナビ」では、いじめ対策の知恵や相談番号を子どもに届けるため、生徒手帳に必要な文言をプリントしよう、というプロジェクト「いのちの生徒手帳」を推進中。現在、複数の自治体や学校に対して、生徒手帳プロジェクトの参加を呼びかけているそうです。

また、いじめ・いやがらせから脱出するために、役にたつアイテムとして、「あしたニコニコメモ」
「家族向けチェックシート」などをサイトからダウンロードできるようにしています。
大変、デリケートで難しい問題ですが、やはり可視化していくということが第一歩なのかもしれません。





<リンク>
ストップいじめ!ナビ(いますぐ役立つ脱出策)http://stopijime.jp/
ストップいじめ!ナビ (いじめを止めたいおとなたちへ)
http://stopijime.jp/adult/

(参考)SYDNOS JOURNAL
いじめを止めたい大人たちへ ―― 「ストップいじめ!ナビ」第二弾更新にあたり
http://synodos.livedoor.biz/archives/2022432.html

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