2013年2月16日土曜日

定年退職を目前にして、
いきなり退職金が減額されることになったら。

あなたならどうしますか。

埼玉県が2013年2月からの職員退職金引き下げを決め、100人以上が1月末で辞めることが発覚してから、これをめぐる論争が続いています。


この問題は、「国家公務員の退職手当を今年1月から減額する法律」の施行に端を発するもの。国では、すでに1月1日から施行されています。地方公務員法で「地方公務員の退職手当は国家公務員に準じる」と規定されているため、各自治体も条例の改正に着手し始めましたわけですが、その結果としての混乱が起きているのです。

駆け込み退職は、責任放棄?

新聞報道によれば、埼玉県では勤続35年以上の教員が年度末の3月末に退職すると、2500万円程度の退職金のうち140万円ほど減額されることから、1月末での「駆け込み退職」を選ぶ教員が増え、その数は110人を超えたそうです。
この「駆け込み退職」は全国に広がり、愛知・兵庫両県では約230人の警察官が施行前に退職するなど、その後も各自治体の動向が続々報道されました。混乱を防ぐため、施行を4月1日以降に先送りする自治体も出てきています。

これに対して、さまざまな声が聞かれます。
そのひとつが、「教員や警察官は公僕中の公僕。もう少し使命感があってもいい」というもの。とりわけ、教員の「駆け込み退職」については、「卒業式を目前にして、生徒の教育を途中で投げ捨ててお金を選択するのか」「責任を放棄された子どもたちは大人を信用できなくなる」などと非難する声が散見されました。

一方、突然の制度変更に翻弄される公務員に同情する声も。公務員といえども生活者なのだから、生活も事情もある、一概に避難できないというものです。
非難されるべきは「駆け込み退職」をする先生方ではなく、駆け込みを促すような制度を作った側、すなわち官僚と国会議員の方だという指摘もあります。



職業への誇りは、お金で計れるのか?

この件に関しては、明らかに、制度や施行の段取りの方に問題があると思います。その上で私が思ったことは「職業への誇りは、お金で計れるのか?」ということです。

埼玉県では、条例施行前に辞める人約110人に対し、辞めない人も1000人以上いたようです。有利な条件を選ばずに職務をまっとうする人の方が多数であったことは、喜ばしいことかもしれません。
しかし、だからと言って「駆け込み退職する人よりも少し退職金が減るが、職を全うすれば、それ以上の誇りを胸に抱いてこれからの人生を歩むことができる。」というような論調には違和感を感じないではいられません。それは個人個人の生き方や都合によるもので、少なくとも他人が論じるものではないはずです。

今回、埼玉県の例で言えば、期末まで働けば、その分の給料が入ってくるので、駆け込み退職した場合に比べた実質的な差は70万円程度。そこで、「70万円ぽっちの損得のために、教師の誇りを捨てるのか?」という論調になっているような気がします。
でも、その差がもっと高額だったら、例えば300万円だとしたらどうでしょうか?今、非難している人も、「それだけ差があるなら、駆け込み退職も仕方ないなあ」と、理解を示さざるを得ないのではないでしょうか?そうであれば、結局のところ、「仕事の誇り」や「公務員の矜持」といった美辞麗句に名を借りた、ただの公務員バッシングでしかないような気がします。


衆議院解散当日に駆け込みで法律を成立させるようなやり方ではなく、余裕を持って制度改変を行えば、こんな混乱は起きなかったはず。また、こういう動向は見込めていたはずなのだから、自治体の側でも、東京都のように定年退職の時期を60歳になった年度の年度末と定めるなどの制度に改定しておけば混乱は少なかったはずです。
しかし、そのような本質的問題への追及はメディアでもあまり見られず、感情論のような取り上げ方が目立ったのは大変残念であり、後味の悪い出来事でした。

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